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神戸大学 理学研究科 惑星学専攻・惑星学科 Home Page

スタッフ

山崎 和仁 

 理学研究科・惑星学専攻・新領域惑星学講座 講師
 理学部・惑星学科 講師(併任)

  • e-mail:yk2000(at)kobe-u.ac.jp
  • 居室 :自然科学総合研究棟3号館5階520号室
  • 学位 :博士(理学)


研究の興味

(1)不連続遷移中(非平衡状態中)における安定性解析
系を支配するパラメタが連続的に変化したとしても,系の状態自体が不連続(急激)に変化することがあります。例えば,進化古生物学における断続平衡的進化や大量絶滅,構造地質学における地層の座屈褶曲および断層欠陥場の形成です。通常のスケールでは,この不連続変化は「瞬間」と認識されます。しかしながら,地球科学においては,系の規模は非常に大きくまたその時間単位も地質学的なものとなります。つまり,この「瞬間」的不連続変化は有限な時間を要し, したがってその遷移中に様々な摂動が系に加わる可能性があります。このとき,系は安定なのでしょうか,不安定なのでしょうか。また,この遷移中は本質的に非平衡状態にあります(もし平衡状態が途中に存在すればそこで遷移は終わるので)。したがって,上記の問題は非平衡状態における安定性解析の必要性を示唆します。この解析を,微分幾何学に基づいて行っています。

(2)分数階微積分に基づく地球連続体力学の再構築
岩石の破壊変形現象は地球連続体力学(主には弾性体力学)にもとづき記述されます。通常,これは整数次元の空間で解析されています。一方,観察データから,同現象には様々な非整数性の特徴(自己アフィン・フラクタルなど)が報告されています。したがって,実際の自然を記述するためには,非整数性を取り入れた力学が必要となります。地球連続体力学は,微積分に基づく理論ですので,分数階微積分に基づき,それを非整数領域にまで拡張すること目指しています。

(3)断層・欠陥場における連続体力学
岩石を均一な連続体と見なす近似は非常に有効であり、複雑な力学挙動の記述が、偏微分方程式とその境界値問題へと簡略化されることが知られている。しかし、より小さなスケールで観察するならば、実際の岩石はさまざまに異なった微小要素から構成されており、その不均一性を無視することはできない。特に、岩石の変形が大きく破壊に至るような過程(例えば震源域)や、粒状性をもつ領域では、その微視的な不均一性が果たす役割は大きく、各要素の挙動および要素間の相互作用を考慮にいれた連続体力学は重要なものと期待されている。 特に回転成分を含む断層(e.g., 旋回断層や蝶番断層)においては、巨視的回転とは独立に,その構成要素自身の微小な回転をも考慮に入れなければならない。そこで、そのような系を支配する保存則,平衡の式および構成則を統一的に導く研究を行った。導いた基礎方程式の固体地球科学への応用として、(1)結晶格子選択配向(LPO);(2)断層周辺のブーゲー重力異常などを考えた。これにより、不連続性を伴うLPOや、横ずれ断層による局所的剛体回転などを、より現実的に記述することが可能となった。さらに、固有歪周辺の動的歪場方程式を 基礎とし、固有歪に起因するブーゲー異常の方程式を導いた。この式の汎用性から、固有歪の具体的な関数として介在物型を選べば岩脈周辺に生じる異常を、欠陥場型を選べば断層周辺に生じる異常の式が導かれる。特に後者において、震源が静的でかつ点状である場合には、くいちがい弾性論を用いて導かれた既存の解析解に一致する。つまり、この方程式は震源が動的かつ有限領域をもった場合にまで拡張したものといえる。 さらに、断層欠陥場における二次元変形・流体理論を,曲面の幾何学に基づき考察した。その結果,スカラ解のなす曲面(応力関数曲面,流れ関数曲面)のガウス曲率と平均曲率が,全ての二次元変形・流れ現象の特徴を記述しうることを示した。これにより、例えば、断層場における剪断破壊の計算などが従来の解析に比べ一般化された。また、従来の解析では扱いが難しい回転成分を含む場合においても、同様の計算が可能であることが示された。

(4)進化古生物学
島に棲む・Eカ物の種数を決定している要因は非常に多様であり、生息場所の物理的環境、種間の相互作用および歴史的過程(e.g., 大陸移動や陸橋の形成)が考えられる。ところが、島の面積変化というたった一つの幾何学的要因が種数変化と統計的に相関をもつことが経験的に知られており、Arrheniusの種数面積曲線と呼ばれてきた。この関係は、大陸の分裂や集合および海水準変動に伴う生物の多様性変化(大量絶滅など)を引き起こす要因の一つと考えられているが、 定量的な考察はされていない。そこで、この種数面積関係を、地質学的時間スケールで考察した。解析対象として、 琉球弧喜界島における陸産貝類(カタツムリ)を考えた。 海水準変動により島の面積は変化しているので、アイソスタシー効果も考慮に入れた数値計算から島の面積変化を計算した。また陸産貝類の化石から種数を見積もり、両者のあいだに相関があることを示した。これは,種数面積関係に時間軸をいれた最初の研究である。また,島の面積だけでなく形も種数と関係することを示した。これは,生物の古拡散経路と関係することが示唆された。 また、 パターンに内在する対称性の定量的表現手法を開発し,古生物の形態解析などに応用を試みている。その結果、自己組織化を伴う離散パターンにおいては,特定の対称性が卓越するという結果が示唆された。ただ,これが古生物学的離散パターン固有の性質かどうかについては,今後,解析データの種類と範囲を広げた解析による反証が必要である。

EXP

学生の現在の研究テーマ:
顕生代における地球環境変化と生物系統樹における分岐パターンの関係(M2)
Senguptaモデルにもとづく遺伝暗号の発現と進化(M2)
コアレセンス理論に基づく化石データの解析(M1)
de Wijsの経験則に基づく鉱物分布の解析(M1)
腐食連鎖の進化からみたK/Pg境界の大量絶滅(M1)
オーロラ4形態(arc, radiation, hotspot, drapery)のマルチフラクタル解析(M1)

主な研究テーマ 

  • 断層欠陥場における連続体力学
  • 進化古生物学

最近の代表的な論文・書籍 

  • K. Yamasaki and T. Yajima, 2020, "KCC analysis of a one-dimensional system during catastrophic shifts of the Hill function: Douglas tensor in the non-equilibrium region", Int. J. Bifurcation and Chaos (accepted in press).
  • K. Yamasaki and T. Hasebe, 2020, "Duality of the Incompatibility Tensor", Materials transactions (accepted in press).
  • T. Yajima, S.Oiwa, K.Yamasaki, 2019, "Geometry of curves with fractional-order tangent vector and Frenet-Serret formulas", Fractional Calculus and Applied Analysis, 21, 1493-1505.
  • K. Yamasaki and T. Yajima, 2017, ”KCC analysis of the nornal form of typical bifurcations in one-dimensional dynamical system: geometrical invariants of saddle-node, transcritical, and pitchfork bifurcations”, Int. J. Bifurcation and Chaos, 27, 1750145 (14 pages).
  • K. Yamasaki and T. Yajima, 2016, “Differential geometric structure of non-equilibrium dynamics in competition and predation: Finsler geometry and KCC theory”, J. Dynamical Systems & Geometric Theor., 14, 137-153.
  • N. Nakamura and K. Yamasaki, 2016, “Feynman’s Proof and Non-Elastic Displacement Fields: Relationship Between Magnetic Field and Defects Field”, Int. J. Theoretical Physics, 12, 5186-5192.
  • T. Yajima and K. Yamasaki, 2016,“Jacobi stability for dynamical systems of two-dimensional second-order differential equations and application to overhead crane system”, Int. J. Geometrical Methods in Modern Phys., 13, 1650045.

担当授業科目

学部
全学共通
教養原論/惑星系の起源・進化・多様性(前期/後期)(分担)
地学実験(分担)
学部
惑星学基礎V1,2(分担)
惑星学基礎V演習(分担)
惑星学基礎IV演習(分担)
惑星学実習C(分担)
大学院前期
惑星学通論1,2,3,4(分担)
大学院後期
惑星学特論1,2,3,4(分担)

所属学会 

  • 日本古生物学会 正会員
  • 形の科学会 正会員
  • 進化学会 正会員
  • 数理生物学会 正会員


                                              更新日 2020年5月12日


     

神戸大学 理学研究科 惑星学専攻

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