神戸大学大学院理学研究科 惑星科学研究センターの綱島隆太特命助教が、情報処理学会の2025年度(令和7年度)山下記念研究賞に選ばれました。山下記念研究賞(平成6年度に研究賞から改称)は情報処理学会の前年度の研究会およびシンポジウム発表論文の中から特に優秀な論文を選定し、その発表者に授与されるものです。
対象となったのはSWoPP2024内で開催された第195回HPC研究会での発表論文「ポスト富岳世代のMN-Coreベースアクセラレータ対応OpenACCのインターフェイスとコンパイラの検討及び開発」です。MN-Coreシリーズは神戸大学(惑星科学研究センター長・牧野淳一郎特命教授らの研究グループ)と株式会社Preferred Networksにより共同開発されているAI及びHPC向け国産アクセラレータです。同世代のGPUなど他のプロセッサに対し、少ない消費電力で高い演算性能を出すことができます。世界のスーパーコンピュータ(スパコン)の省電力ランキングGreen500ではMN-Core搭載スパコンが2020年〜2021年の4回中、1位に3度ランクインしました。
MN-Coreは高精度が求められる惑星科学をはじめとした科学計算に必要な倍精度の浮動小数点数演算器を搭載しており、科学計算のHPC用途での活躍が期待されているものの、AI向けのプログラミングにしか対応しておらず、汎用なHPC向けのプログラミング手段は存在しませんでした。この発表論文ではアクセラレータとしてGPUなどと比較して独特なMN-Coreのアーキテクチャにとって適切なプログラミングとコンパイラについて検討を行い、MN-Core向けOpenACCのインターフェイスと開発した言語処理系のプロトタイプについて発表しました。これにより、GPUで普及しているOpenACCによるMN-Core向けのプログラミングが可能であること、及びコード変換が行えることの一端を示せました。
今後この成果を基に開発を進めることで、MN-CoreがHPC分野、特に科学計算用途で汎用に有効活用できるようになることが期待されます。
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